仕事部屋の設計
仕事道具のリチウムイオン電池、夏に確認すること
モバイルバッテリーやノートPCなど、リチウムイオン電池を積んだ仕事道具の事故は夏に増える。NITEの発表をもとに、手元の機器の数え方、保管・充電の点検、廃棄時の分別まで確認する手順を整理する。
SCOPE
- 対象
- 仕事でノートPCやモバイルバッテリー、ワイヤレス機器を日常的に使う在宅ワーカー・個人事業主・小規模オフィス
- 到達点
- 手元のリチウムイオン電池搭載製品を洗い出し、保管・充電・廃棄それぞれの確認点を実行できる状態
夏場、ノートPCを充電したまま休憩に出て、戻ると本体の底面が熱を持っていることに気づく。あるいは、鞄に入れっぱなしのモバイルバッテリーが、炎天下に停めた車の中で数時間放置される。仕事道具として毎日持ち歩き、毎日充電する機器の多くは、リチウムイオン電池を積んでいる。
このタイプの電池は、高温と衝撃に弱いという共通の性質を持つ。国の製品安全機関であるNITE(製品評価技術基盤機構)は2026年7月、リチウムイオン電池搭載製品の事故が夏に増える傾向を公表した。何が対象で、仕事部屋のどの機器に当てはまるかは、発表そのものには書かれていない。ここでは、在宅ワークや小規模オフィスで日常的に使う機器に当てはめて、確認すべき点を整理する。
対象になり得るのは、モバイルバッテリーだけではない。ノートPC本体、ワイヤレスイヤホン、ワイヤレスのマウスやキーボード、スマートロックやセンサーのような自動化機器も、内部にリチウムイオン電池を持つ。仕事部屋にある機器を思い浮かべながら読み進めてほしい。
発表の要点:事故は8月にピークを迎える
NITEによると、2021年から2025年までの5年間に通知された「リチウムイオン電池搭載製品」の事故は2,140件にのぼる。製品別ではモバイルバッテリーの事故が最も多く、事故の発生件数は春から夏にかけて気温の上昇とともに増加し、8月にピークを迎える傾向があるという。
出典:製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全 プレスリリース「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を ~「リチウムイオン電池搭載製品」は3つのCで事故を防ぎましょう!~」 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2026fy/prs260715.html
具体的にどの製品で何件の事故が起きたか、発火と破裂の内訳がどうなっているかまでは、発表では示されていない(2026年8月時点)。ここから先の対応は、モバイルバッテリーの事故が最も多いという事実と、気温が事故の主要な変数だという傾向をもとに、仕事道具に当てはめて考える。
仕事道具のどれが「リチウムイオン電池搭載製品」か
仕事部屋にある機器のうち、リチウムイオン電池を積んでいるものは見た目では判別しにくい。ケーブルをつないでいる間だけ動く機器(有線のキーボードや大半の外付けモニターなど)は電池を持たないが、コードを抜いても動き続ける機器は、たいてい内部に電池がある。
次のような機器が対象になる。
- モバイルバッテリー、モバイルWi-Fiルーター
- ノートPC本体(内蔵バッテリー)
- ワイヤレスイヤホン・ヘッドセットとその充電ケース
- ワイヤレスのマウス・キーボード
- スマートロック、ドア・窓の開閉センサー、人感センサーなどの自動化機器(充電式のものに限る)
- スタンディングデスクの昇降リモコン、ワイヤレス充電器
このうち、事故の件数が最も多いのはモバイルバッテリーである。持ち運ぶ頻度が高く、鞄の中で圧迫や高温にさらされやすい機器ほど、リスクの出方が大きいと考えられる。
製品の型で見る、熱がたまりやすい場面
製品ごとの個別の事故率を確認する手段はないが、使われ方の型で見ると、熱がたまりやすい場面と確認すべき点は整理できる。
| 製品の型 | 熱がたまりやすい場面 | 日常で確認すること |
|---|---|---|
| モバイルバッテリー | 鞄の中、炎天下の車内、直射日光の当たる窓際 | 使用中に熱を持っていないか、外装が膨らんでいないか |
| ノートPC本体 | 布団やクッションの上での充電、通気口をふさいだ状態 | 充電しながらの作業で底面が熱くなっていないか |
| ワイヤレスイヤホン・マウスなどの周辺機器 | 充電ケースを鞄に入れたまま持ち歩く | ケースや本体が変形していないか |
| 常時設置する自動化機器(スマートロック・センサー等) | 直射日光の当たる窓・玄関まわりに設置されている | 電池交換の際に膨張や変形がないか |
型で分けておくと、機器を買い足すたびに置き場所を個別に迷わなくて済む。同じ型に属する機器は同じ扱いにしておけばよい。
保管と充電の習慣を点検する
NITEは「丁寧に使う」として、高温となる場所では使用・保管しないこと、強い衝撃や圧力を加えないこと、異常を感じた場合は使用を中止することを挙げている。仕事部屋での運用に置き換えると、次の3か所が点検の対象になる。
充電する場所:窓際でノートPCを充電したまま席を外すと、日中の日射でその一角だけ温度が上がる。充電中の機器は、直射日光の当たらない場所に置き直す。
持ち歩く鞄の中:モバイルバッテリーやワイヤレスイヤホンのケースは、鞄の中で他の荷物に圧迫される。硬い荷物と一緒に詰めない、鞄を車内に放置しないという扱いだけで、圧力と高温の両方を避けられる。
布団やクッションの上での作業:ノートPCを布団やソファのクッションの上に置いたまま使うと、底面の通気口がふさがれ、熱が逃げない。作業中に底面が熱くなっていないか、時々手で確かめる習慣を持つ。
配線側の発熱・発火リスクについては仕事部屋の配線を整理する順番と、増やさない設計で扱っている。電源タップやケーブルの発熱と、電池そのものの発熱は原因が別だが、どちらも「熱がこもる配置を避ける」という対策は共通している。
購入前に確認すること
NITEは「賢く選ぶ」として、購入前に販売事業者の連絡先や製品情報、リコール情報を確認すること、表示マークが適切か確認することを挙げている。これは、いま使っている機器にも遡って当てはめられる。
- 販売元の連絡先が製品や説明書に明記されているか
- 電池の規格・容量を示す表示があるか
- 購入した製品にリコールが出ていないか(発表では確認の必要性のみが示され、具体的な確認方法や窓口までは書かれていない)
すでに使っている機器についても、この3点を一度確認しておくと、次に買い替えるときの判断材料が増える。ワイヤレスイヤホンのように毎日使う機器を選ぶときは、装着感や聞こえ方だけでなく、この確認を購入前の手順に加えておく。選び方の観点はWeb会議用イヤホンの選び方でも扱っているが、電池の確認はそこには含まれていないため、別に押さえておく必要がある。
手放すときの分別を確認する
NITEは「正しく捨てる」として、家電製品を廃棄する際にリチウムイオン電池の使用の有無を確認すること、メーカー回収や自治体の回収区分などの廃棄方法を確認することを挙げている。
仕事部屋で問題になりやすいのは、小型の周辺機器である。モバイルバッテリーやスマートロックのような機器は「電池を使った製品」だと意識されやすいが、ワイヤレスイヤホンやワイヤレスマウスは、電池搭載製品だという認識がないまま通常のごみに出されることがある。壊れた機器や使わなくなった機器を処分する前に、内部に充電式の電池が入っているかどうかを確認し、自治体の回収区分か、購入した店舗・メーカーの回収窓口のどちらに出すべきかを調べる。
自動化機器を入れ替えるときは、古い機器の処分先を先に決めてから新しい機器に置き換えると、使わなくなった電池搭載機器が引き出しに溜まる状態を避けられる。導入の進め方は小規模オフィスにIoT機器を入れるときの進め方、玄関まわりの機器については小規模オフィスにスマートロックは必要かで扱っている。
次にやること
- 手元の機器を数える:モバイルバッテリー、ノートPC、ワイヤレスイヤホン、ワイヤレスマウス・キーボード、自動化機器のうち、充電式のものを書き出す
- 保管場所を見直す:充電中の機器と、鞄に入れて持ち運ぶ機器について、直射日光と圧迫を避けられる場所に置き直す
- 使わなくなった機器を分ける:引き出しや棚にある未使用の機器を集め、電池搭載の有無で分ける
- 廃棄区分を確認してから処分する:分けた機器のうち処分するものは、自治体の回収区分かメーカー回収のどちらに出すべきかを確認してから処分する
事故の具体的な原因や、製品ごとの安全性までは、この発表からは分からない。分かるのは、事故が夏に増える傾向があること、対象になる機器の範囲が広いこと、そして確認すべき手順がすでに示されていることである。手元の機器を数えるところから始められる。