自動化とスマート機器

デスク周りで自動化できることと、しないほうがよいこと

デスク周りの自動化は、1日に何度も繰り返す電源・照明・PCの接続に絞ると効きます。判断が入る操作や失敗に気づけない操作は手動のまま残すほうが安全で、機器を買う前に電源の系統を分けるだけでも触る回数は減ります。

PUB UPD CAT 自動化とスマート機器 READ 約9分

SCOPE

対象
デスク周辺の細かい手間を減らしたい在宅ワーカー
到達点
自動化して効果がある操作とない操作を区別し、必要な範囲だけ導入できる状態
当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。 広告掲載ポリシー

デスクに座ってから実際に作業を始めるまでの動作を並べると、電源タップのスイッチを探して押す、モニターの入力を切り替える、ノートPCにケーブルを3本挿す、デスクライトをつける、といったところです。1回あたり30秒から1分。朝と昼休み明けで1日2回、それが週5日続きます。

この手間を減らそうとして機器を調べ始めると、話が急に部屋全体へ広がります。人感センサーで照明を、外出先からエアコンを、という具合です。ただ、デスク周りの手間はそれとは性質が違います。部屋の自動化は「在室か不在か」という1日に数回の状態変化を扱いますが、デスクの手間は「作業を始める・中断する・終える」という短い区切りにぶら下がっていて、発生回数が多い代わりに1回で浮く時間は数十秒しかありません。

数十秒の操作を機器で置き換える価値があるかどうかは、回数と、誤作動したときに戻す手間で決まります。ここでは範囲をデスクの上と下だけに限って、入れれば回数分だけ効いてくる操作と、回数が多くても手動のまま残したほうがよい操作を分けます。

デスク単位で効くかどうかは、回数で決まる

機械に渡してよい操作の条件(毎日発生する・実行に判断が要らない・失敗しても手で取り返せる)は、部屋全体を対象にした仕事部屋を自動化するにはどこから手をつけるかで整理しています。デスク単位では、そこに回数の線を1本足します。1日に2回以上発生しているかです。

1回で浮くのが数十秒しかないため、回数が少ないと設定と手直しの手間が先に上回ります。週に1回の操作なら、次に動いたときには条件のほうを忘れています。

回数は、想像ではなく数えてください。1週間、机の端に紙を置いて、スイッチを触った回数とケーブルを抜き差しした回数を正の字で記録します。記録してみると、減らしたいと感じていた操作と、実際に回数が多い操作がずれていることがあります。

数えたうえで、動かなくなったときの復旧までを見込みます。設定画面を開いて原因を探す時間が、もともと減らしたかった数十秒を上回るなら、その操作は手動で残すほうが速く済みます。デスク周りの自動化が失敗するときは、たいていこの形です。

効果が出るのは電源・照明・PCの接続状態の3か所

電源。デスク下のタップは、たいてい手を伸ばしにくい位置にあります。ここを通電の制御に置き換えると、消えるのは「探して押す動作」です。待機電力を減らすことを目的にすると、設定にかけた手間に見合いません。効いてくるのは、モニター・ライト・スピーカー・充電器のように作業中しか使わない機器を、ひとまとめに扱えるようになる点です。逆に言えば、切ってよい機器と切ってはいけない機器が同じタップに混ざっていると、この方法は使えません。

照明。デスクライトは、明るさと色をその都度合わせ直している人ほど回数が多くなります。安定して動くのは時刻を条件にした切り替えで、夕方に色温度を下げる、といった使い方です。人の動きを条件にすると、キーボードだけを触っていて体が動かない時間に消えます。会議の前後で明るさを変えたい場合は、会議中に自動で動く設定にせず、開始前に一括で切り替える操作を1つ作るほうが安全です。会議中に機器が勝手に動いたときに何が起きるかは、スマートホーム製品を仕事場で使うときの注意点で扱っています。

PCの接続状態。厳密には自動化ではありませんが、デスク周りで最も回数が減るのはここです。外部モニター・有線LAN・キーボード・給電を1本のケーブルに集約すると、着席のたびに3〜4回やっていた抜き差しが1回になります。制御する機器を挟まないので、うまくいかなければ元のケーブルに戻すだけで済みます。自動化を検討している段階なら、機器を買う前にこの構成を先に片付けたほうが、あとの判断が単純になります。

回数と復旧のしやすさで並べると、境目が見える

同じ「デスク周りの操作」でも、自動化に向くかどうかは次のように分かれます。

対象の操作 1日の発生回数 自動化で消える手間 誤作動したときに起きること
周辺機器の電源 作業の開始と終了で2回前後 タップやモニター背面のスイッチを探して押す動作 通電しない、または作業中に切れる。手で押し直せば戻る
デスクライトの明るさ・色 2〜4回。天候と時間帯で増える 毎回つまみを合わせ直す動作 明るすぎる・暗すぎる状態が続く。手元のスイッチで戻る
PCの接続(映像・LAN・給電) 着席と離席で2回 3〜4本の抜き差しが1本になる 映らない、充電されない。挿し直しで戻る
モニターの入力切替 機器を使い分けるなら数回 本体ボタンでメニュー階層をたどる操作 画面が出ない。本体ボタンで戻せるが手間は残る
足元のヒーター・小型ファン 体感しだいで不定 ほとんど減らない。結局その場で強さを変える 暑い・寒いが続き、手動運転に戻すことになる
会議のマイクとカメラ 会議の数だけ 減るが、いまどちらの状態かの表示が別途要る 意図せず音声が流れる、無音のまま話す。自分では気づけない
PC本体の電源・スリープ 2回 数秒程度 保存前に落ちる、復帰しない。戻すのに数分かかる

下の3行が、回数だけを見ると自動化したくなるのに、実際には手動で残したほうがよい側です。マイクとカメラは1日に何度も操作しますが、状態を間違えたときに自分では気づけません。PC本体の電源とスリープは、失敗したときの停止時間が、浮く数秒とつり合いません。

手動のまま残す操作には共通点がある

自動化しないほうがよい操作は、次のどれかに当てはまります。

  • 判断が入る。足元のヒーターや小型ファンは、同じ室温でもその日の体調で必要な強さが変わります。条件を固定すると結局その場で触ることになり、機器を挟んだ分だけ操作が増えます
  • 失敗に気づけない。マイクのミュート、カメラの遮蔽、バックアップの実行など、結果が目に見えないものは対象から外します。点いた・映った・通電した、のように目で確認できる結果に限ると事故が減ります
  • 戻すのに時間がかかる。PCの電源、外付けストレージへの通電、スリープからの復帰がこれにあたります。特に外付けストレージを自動で切る系統に入れると、書き込みの途中で電源が落ちる可能性があります
  • 自分以外も触る。家族や同居人が使う可能性のある照明やコンセントを自動制御にすると、手元のスイッチを押しても反応しない状態が生まれます。物理スイッチが切のままだと自動制御も届かない、という組み合わせも起きます

もう1つ、頻度そのものが低い操作も外します。月に1回しか動かない自動化は、次に動いたときに設定内容を覚えていません。理由の分からない動作が起きると、原因を探す時間のほうが長くなります。

順序は「減らす・まとめる・自動化する」

デスク単位でやる場合、機器を買うのは最後です。順番を逆にすると、整理されていない配線の上に制御機器が乗るので、どこで何が止まっているのか分からなくなります。

段階1|減らす。毎回抜いているケーブルのうち、挿したままでよいものを探します。持ち出さない周辺機器、常時つないでおいても支障のない機器は、抜き差しの対象から外します。この時点で対象が減れば、あとの判断はその分だけ単純になります。

段階2|まとめる。電源の系統を分け、映像と給電を1本にできる部分はまとめます。系統は次の3つに仕分けます。

系統 ここにつなぐもの 通電を止めたときに起きること 自動化との関係
常時通電 ルーター、ネットワーク機器、制御機器の本体 他の自動化ごと止まる。復帰に数分かかることがある 自動制御の対象から外す。物理的に別のタップにする
作業時のみ通電 モニター、デスクライト、スピーカー、充電器 表示や音が消えるだけ。押せば戻る ここだけを自動化の対象にする
手動のみ 外付けストレージ、プリンタ、暖房器具 書き込み中の破損、加熱、動作の中断が起きうる 自動では切らない。切るなら終了の操作を挟む

この仕分けは機器を買わなくてもできます。タップを2つ以上に分けて、挿す場所を変えるだけです。ここまでやると、自動化の対象は「作業時のみ通電」の系統に限られます。配線そのものを組み直す手順は、仕事部屋の配線を整理する順番と、増やさない設計で扱っています。

段階3|自動化する。残った操作にだけ機器を入れます。最初は時刻を条件にしたスケジュールから始め、センサーや複数条件の組み合わせは後回しにします。条件が増えるほど、意図しない動作が起きたときに原因を特定しにくくなります。1つ入れて2週間動かし、問題がなければ次を足す、という進め方で十分です。

機器を足すと、配線と管理対象が両方増える

自動化で減るのは操作の回数ですが、代わりに増えるものがあります。導入前に見込んでおくと、あとで戻す判断がしやすくなります。

  • 制御する側の機器も電源を使います。赤外線を出す機器やハブ型の機器は、それ自体が常時通電です。自動で切る対象を増やしたつもりが、切れない機器のほうが増えていた、という逆転が起きます
  • その制御機器を、自動で切る系統につないでしまう失敗があります。切ったあとに制御する側が止まるので、手で入れ直すまで戻りません。制御機器は常時通電の系統に固定します
  • ケーブルを1本にまとめると、その1本が単一の故障点になります。集約している機器が壊れると、映像も有線LANも給電も同時に止まります。直結できるケーブルを1本だけ引き出しに残しておくと、復旧までの時間が変わります
  • 通信する機器が増えると、Wi-Fiにつながる台数も増えます。会議の音声が不安定な状態で機器を足すと、原因の切り分けが難しくなるので、先に回線側を確認しておくほうが早いことがあります(仕事場のWi-Fi環境を改善する手順
  • 物理的な厚みも効いてきます。コンセントに挟む型の機器は隣の口を塞ぐことがあり、口数はあるのに挿せない状態になります

次にやること

  1. 今週1週間、デスクで触ったスイッチ、抜き差ししたケーブル、切り替えた入力の回数を数える
  2. 1日2回未満のものを候補から外す。この時点で候補はかなり減ります
  3. 電源を「常時通電/作業時のみ/手動のみ」の3系統に仕分け、タップを物理的に分ける。ここまでは機器の購入が要りません
  4. 残った操作が1つか2つなら、そこにだけ機器を入れる。残らなければ買わない

3まで進めた時点で、手間の正体が制御ではなく配線の構成だったと分かることがあります。その場合、制御機器を足しても回数は減りません。実際に買う段階まで進んだときの選び方は、スマートオフィス機器の選び方で扱っています。

よくある詰まりどころ

設定したのに、動くときと動かないときがある

条件が複数重なっている場合は、まず条件を1つに減らして動くかどうかを確かめ、そこから足していきます。デスク周りは手が届く範囲なので、原因が分からないまま使い続けるより、いったん手動に戻して切り分けるほうが早く済みます。

家族から「スイッチが効かない」と言われる

自動制御を挟んだ機器は、物理スイッチが切の状態だと反応しません。共用の場所にある照明やコンセントは対象から外すか、物理スイッチを常時オンにしておく運用に統一します。運用を家族が覚えられない場合は、その場所は自動化に向きません。

機器を入れたのに、朝の手間が変わらない

消えたのは「押しに行く動作」だけで、操作そのものは残っていることがあります。数えた記録を見直して、残っている回数の大半がケーブルの抜き差しなら、制御機器ではなく接続の集約を先にやり直します。

やめたくなったが、外し方が分からない

導入時に、外した状態でも機器が動くかどうかを確かめておきます。確かめていない場合は、制御機器を常時オンに固定してから物理的に外すと、途中で通電が切れたままになる事態を避けられます。