仕事部屋の設計

デスクチェアの選び方|長時間座る人が確認する条件

デスクチェアは座り心地の評価ではなく、体格・1日の座り方・床の条件で候補が絞れます。調整できる箇所の効く順番、型ごとに向く人と向かない人、通販で買う前に確認することを、製品名を挙げずに整理しました。

PUB UPD CAT 仕事部屋の設計 READ 約9分

編集 仕事部屋LAB編集部

自宅の仕事机でデスクチェアの座り心地を確かめる人
机・椅子・照明の寸法を整える仕事部屋設計の編集イラスト

SCOPE

対象
在宅ワークや小規模オフィスで1日数時間以上座り、椅子の買い替えを検討している人
到達点
自分の体格・座り方・床の条件から必要な調整範囲を決め、候補を絞れる状態

届いた日は調子がいい。座り慣れてくるころに、前の椅子と同じ場所が同じように痛み始めます。金額を上げたのに何も変わらなかった、という結論になります。

原因は品質ではなく、合わせられなかったことにあります。椅子は単体で完結する道具ではありません。床と天板のあいだに挟まって、はじめて条件が決まります。同じ椅子でも、天板の高い机と組み合わせれば肩が上がり、低い机なら手首の置き場所がなくなります。

そのため、選ぶときに見るのは座り心地の評価ではなく、自分の体と部屋に合わせられる範囲がどこまであるかです。ここでは体格・1日の座り方・床の条件の3つで候補を削り、買う前に確認することまでを扱います。すでに机や画面との高さが合っていない自覚があるなら、買うより先に椅子・机・画面の高さを合わせる順番を確認してください。椅子を替えても直らない不調は、そちらが原因です。

椅子の良し悪しは、合わせられる範囲で決まります

店頭で数分座って分かるのは、クッションの硬さと第一印象だけです。長時間で効いてくるのは体重がどこで支えられているかで、これは数分では表に出ません。柔らかくて気持ちがいいと感じた椅子が、半日後にいちばん腰に来ることもあります。

椅子がやっていることは3つです。体重を座面で受けること、骨盤と背中を支えること、姿勢を変えられるようにすること。このうち最初の2つが体格に合っていないと、あとの機能はほとんど働きません。背もたれの構造が凝っていても、座面が体に対して深すぎれば背中はそこまで届きません。

調整できない椅子は、体のほうが合わせにいくことになります。 数日は自分で姿勢を作れますが、集中している時間帯には維持できません。そして姿勢が崩れた状態こそが、実際に長く続いている姿勢です。選ぶときに見るのは、崩れた姿勢のときにどこが支えられているかです。

体格で見るのは身長ではなく、3つの寸法です

適応身長の表記は目安として役に立ちますが、同じ身長でも脚の長さと座高の比率は違います。確認するのは次の3つです。

座面の高さの下限。足の裏全体が床につく高さまで下がるかどうかです。ここが下がりきらない椅子は、他がどれだけ優れていても合いません。足が浮いた状態では体重の一部を太ももの裏で受けることになり、座っている時間が長いほど圧迫が強く出ます。

座面の奥行き。背もたれに腰を当てた状態で、膝の裏が座面の先端に当たらないことが条件です。当たると、無意識に浅く座り直すことになり、その瞬間から背もたれは使われなくなります。奥行きを調整できる機構は、体格が既製品の想定から外れているほど効きます。

背もたれが支える範囲。肩甲骨の下までか、肩まで届くか、頭まであるかで用途が変わります。前傾で手を動かす時間が長い人は、背もたれの上半分をほとんど使いません。もたれて読む・考える時間が長い人は、支えが上まで欲しくなります。

この3つは、いま使っている椅子に座れば確認できます。足の裏、膝の裏、背中が当たっている位置の3か所を見てください。数値の一覧より、いまの椅子で何が起きているかのほうが、必要な条件を正確に表します。

調整できる箇所には、効く順番があります

機能の多さで比べると判断がつかなくなるので、効く順に並べます。上から順に、合っていないときの影響が大きいものです。

  1. 座面の高さ。合わないと、足の接地か肘の高さのどちらかを必ず犠牲にします。ここだけは代わりの手段が限られます
  2. 座面の奥行き、または背もたれの前後位置。座り方が固定されるかどうかがここで決まります
  3. 肘掛けの高さ。天板と肘の高さの差を埋める最後の調整です。高さに加えて、前後・内外・角度のどれが動くかで、机への収まりが変わります
  4. 背もたれの角度と反発の強さ。もたれる時間が長いほど効きます。体重に合わせて反発を変えられるかは、体格が軽い人ほど影響が出ます
  5. 腰の支えの位置と強さ。位置を動かせないものは、合えば効き、合わなければ当たって痛みます
  6. 頭の支え。もたれる時間が短い人には不要です。前傾姿勢のまま使うと後頭部を押される形になり、邪魔になります

調整箇所が多いほど良い椅子だとは限りません。買った状態から一度も調整していない椅子は珍しくありません。 機構が多いほど、合わせないまま使ったときのずれも増えます。調整できるものを選ぶなら、届いた週のうちに合わせきるところまでが購入です。

肘掛けは、机に当たって椅子が入らないという形で失敗しやすい箇所です。天板の下面までの高さと、肘掛けの最も高い位置を先に照らし合わせてください。

1日の座り方の型で、必要な機能が変わります

同じ「長時間座る」でも、必要になる機能は座り方で分かれます。

前傾で手を動かす時間が長い人。入力や作図が中心で、画面に近い姿勢が続きます。背もたれの上部と頭の支えはほとんど使わず、効くのは座面の奥行きと、前に傾いたときに座面が追従するかどうかです。腰が浮いた状態で固定されると、支えが腰から抜けます。

もたれて読む・考える時間が長い人。資料を読む、会議を聞く、書く前に考える時間が長い場合です。背もたれの高さと角度、反発の強さがそのまま効きます。倒したときに座面ごと少し沈む構造だと、目線と画面の関係が変わるので、画面の位置も合わせ直すことになります。

立ち座りが多い人。打ち合わせ、来客、家事、印刷物の取り出しなどで1時間に何度も立つ場合は、機能より出入りのしやすさが効きます。肘掛けが跳ね上がるか、机の下に椅子ごと収まるか、キャスターが軽く動くか。座面が深く沈む椅子は、立ち上がる回数が多いほど負担になります。

3つが混ざる場合は、いちばん時間の長い型に合わせます。週に一度の作業のために機能を足すと、毎日の座り方のほうが崩れます。

型ごとに、向く人と向かない人が分かれます

製品ではなく型で見ると、条件の違いがはっきりします。

背もたれの高い多機能型 標準的な事務椅子型 座面と背が小さいコンパクト型 姿勢を固定しない型
向いている使い方 もたれる時間が長く、座る時間が1日の大半を占める 前傾と後傾を行き来する一般的な事務作業 机も部屋も狭く、立ち座りが多い 同じ姿勢で固まるのがつらい人の切り替え用
調整できる範囲 広い。合わせきれば体格の差を吸収できる 座面高と背もたれ程度。過不足が出にくい 限られる。体格の合う範囲が狭い 高さ中心。支える方向の調整はほぼない
必要な場所 後ろに倒す余地と、脚の張り出し分の床面積 標準的な机まわりで収まる いちばん小さい 座面の下と足の可動域に余裕が要る
先に消耗する場所 座面のクッションと昇降の機構 座面の張り地とキャスター 座面。面積が小さいぶん一点に荷重が集中する 座面と、動く部分の軸
合わないときに出ること 支えの位置が体とずれ、当たって痛む 長時間で支えが足りなくなる 座り直す回数が増える 支えがないため、疲れたときに姿勢が保てない

姿勢を固定しない型は、座り続ける時間そのものを分散させる目的の道具です。1脚目としてすべての作業をまかなうより、支えのある椅子と併用して切り替えに使うほうが現実的です。すでに痛みが出ている状態で選ぶものではありません。痛みやしびれが続いているなら、椅子を替える前に医療機関で相談してください。 道具の選定はその後の話です。

クッションの厚い椅子は、座った瞬間の印象が最も良くなります。ただし厚みは沈み込みの深さでもあり、沈んだ分だけ座面の実効的な高さは下がります。試すときは、座った直後ではなく数分たった状態の高さで見てください。

床と部屋の条件は、候補を先に削ります

椅子の仕様より先に、置く場所の条件で消える選択肢があります。

  • 床材。硬い床では、キャスターの素材によって傷と音が変わります。毛足の長いラグやカーペットでは、キャスターが沈んで転がらなくなります。畳は点で荷重がかかるため、キャスター付きの椅子とは相性がよくありません
  • 階下への音。集合住宅では、キャスターが転がる音と、立ち座りの振動が床を伝わります。マットを敷くと減りますが、マットの厚みの分だけ座面が上がる点は先に見込んでおきます
  • 必要な床面積。座るための面積ではなく、後ろに下がる距離と、背もたれを倒したときの後方の余地です。脚の張り出しが机の脚や壁に当たると、椅子が正面に入りません
  • 足元の配線。キャスターがケーブルの上を通ると、被覆が傷み、椅子も引っかかります。足元の通り道を確保する手順は仕事部屋の配線を整理する順番で扱っています
  • 搬入経路。大型の椅子は箱の寸法も大きくなります。玄関、階段の折り返し、集合住宅の共用部の幅を先に確認してください。組み立て前の状態で通せるかどうかが条件です

床の条件は後から変えにくく、椅子を替えても付いて回ります。候補を絞る前に、この5つで消えるものを外しておくと、比較する対象が減ります。

買う前に確認する5つのこと

実物に座れない状態で決める場合ほど、次の5つが効きます。

  1. 座れる機会があるか。同じ製品でなくても、同じ型の椅子に座れば座面高の下限と奥行きの感覚はつかめます。展示のある場所を1か所回るだけで、寸法表では判断できなかった項目が埋まります
  2. 返品と交換の条件。期間、組み立て後に受け付けられるか、送料をどちらが負担するか、返送用の梱包材を保管しておく必要があるか。合わなかったときの逃げ道があるかどうかで、選べる範囲が変わります
  3. 組み立ての要否と重量。1人で組み立てられるか、途中で持ち上げる工程があるかを確認します。重い部材を1人で支える工程があると、作業中に傷をつけます
  4. 保証の対象と期間。部位によって扱いが違うことがあります。昇降の機構、キャスター、張り地、背もたれの支持部のどこまでが含まれるかを見てください
  5. 消耗部品を交換できるか。キャスター、昇降の機構、座面のクッションは使用時間で消耗します。部品だけ手に入る作りなら、その椅子は長く使えます

中古や型落ちを検討する場合は、外から見て分からない部分が判断の中心になります。座面のクッションと昇降の機構は、見た目がきれいでも使用時間の分だけ消耗しています。使用年数と、交換部品がまだ流通しているかで判断してください。予算の配分そのものに迷っているなら、仕事道具にお金をかける優先順位で他の道具との順番を先に決めるほうが早く決まります。

よくある詰まりどころ

金額を上げれば解決するのか

上位の椅子は調整できる範囲が広く、体格の差を吸収しやすくなります。ただし調整範囲から外れていれば、金額に関係なく合いません。合わない上位機より、合う標準品のほうが結果は良くなります。

座って数分で腰が痛む

椅子の性能ではなく、座面と天板の高さの関係が原因のことがあります。買い替える前に椅子・机・画面の高さを合わせる順番で切り分けてください。高さを合わせても残る症状は、椅子側の条件か、体側の問題です。

家族と共用していて、毎回設定が変わる

共用するなら、調整のしやすさより再現性を見ます。レバーが座ったまま届く位置にあるか、高さの目安になる目盛りがあるか。合わせ直しに時間がかかる椅子は、そのうち誰も合わせなくなります。

買ったのに、結局ソファで作業している

椅子ではなく、仕事の定位置が決まっていない状態です。この場合は椅子を替えても戻りません。自宅で場所が固定されない原因と対処は個人事業主の仕事環境はどこから整えるかで扱っています。

見た目で決めてよいか

毎日視界に入るものなので、見た目は判断材料に入れて構いません。ただし調整範囲と床の条件を確認した後に残った候補の中から選んでください。順番を逆にすると、合わない椅子を選ぶ理由が見た目になります。